マザーズ上場へIPO承認、スキルシェアマーケットプレイス「ココナラ」の評判、手数料、ビジネスモデルを徹底解剖

マザーズ上場へIPO承認、スキルシェアマーケットプレイス「ココナラ」の評判、手数料、ビジネスモデルを徹底解剖 仕組み

メルカリよりも一足早い2012年に、当時まだ商号変更前の株式会社ウェルセルフが、個人の知識・スキル・経験に基づくサービスを売買するスキルのマーケットプレイス「ココナラ」をリリース。

同様のCtoCマーケットプレイスの運営をしている同社が、ついに上場申請が承認され3月19日、東証マザーズ市場に上場する予定だ。

そこで今回は、同社のこれまでの成長の軌跡を追いながら、ビジネスモデルや具体的な収益構造、今後の成長戦略まで深掘っていきたい。

ココナラとは

ココナラは個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とする全ての人に結びつけ、サービスとして売買する、スキルのマーケットプレイス。

2011年7月に現代表取締役会長で創業者の南 章行氏が、個人事業として活動をスタートし、創業当初は取引単価をワンコイン(500円)のみ、対面でのサービス提供を禁止しオンライン限定のマッチングサービスだった。

CtoCのビジネスモデルでは、ニワトリ・タマゴ問題と言われる「需要サイドと供給サイドのどちらから集めていくのか」という課題があるとよく言われる。

南氏は、メルカリやAirbnb同様に、売る人にいかに買かってもらうかが設計の肝だと感じ、「スキルで儲けよう」ではなく「スキルで人の役に立とう」というブランディングに力を入れて、この事業を確立した。

業績面では2020年8月期通期決算で、GMV(流通取引総額)は約62億、営業収益約18億、経常利益は約8,300万のマイナス、社員数110名で、直近のGMV成長率は約55%と右肩上がりに推移している。

直近の業績

直近の業績
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005atm9-att/03coconala-1s.pdf

2020年8月期通期決算の業績は、先述の通りでGMV(流通取引総額)は約62億、営業収益約18億、経常利益は約8,300万のマイナス。加えて各種重要指標である会員数は約184万人、有料サービス購入をしたユーザー数は約24万人、またそのユーザーが購入した平均金額は約2万5,000円。

また直近2021年8月期第1四半期の業績は、MV(流通取引総額)は約21億、営業収益約6億、経常利益は約6,500万の黒字。会員数は約197万人、有料サービス購入をしたユーザー数は約11万人、またそのユーザーが購入した平均金額は約1万8,000円となった。

その要因として同社は、2020年9月に「ココナラ」内で書かれたブログを「有料ブログ」として販売・購入できる機能のリリースのほか、ユーザーの更なる利便性の向上につながる開発、施策の結果としている。

コスト構造

コスト構造
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005atm9-att/03coconala-1s.pdf

前期2020年8月期通期決算の営業費用は、約18億(前年対比−15%)で主な減少要因は広告宣伝費で、これはテレビCM放映の規模を縮小して実施したためである。

また、今期第1四半期の営業費用は約5.4億円となり、これは主に人件費、決済代行会社の決済手数料、新オフィスの家賃、採用費及び広告宣伝費によるもの。

ビジネスモデルと具体的な事業内容

ビジネスモデルと具体的な事業内容
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005atm9-att/03coconala-1s.pdf

同社はスキルのマーケットプレイス「ココナラ」を主として展開をしているが、その他に、より良いUI/UXを提供するため、ユーザーが弁護士へ法律相談ができる「ココナラ法律相談」、またユーザー同士が対面で会ってサービス提供ができる「ココナラミーツ」を展開している。

サービス出品者は自身の知識・スキルを出品し、購入者は求める解決策が見つかればそのサービスを購入し、対価を受けれる仕組み。お金の流れに関しては、同社はエスクロー決済を導入しており、事前に購入代金を決済した後サービス提供が完了するまで、同社が代金を預かる仕組みである。

これにより、サービスを提供したにも関わらず、出品者がサービス売上金を受け取れないことや、サービスがキャンセルになった場合に購入者に代金が返金されないといった問題が生じず、ユーザーが安心・安全に利用できるようになっている。

次に同社の3つのサービス内容についてみていきたい。

  • ココナラ
  • ココナラ法律相談
  • ココナラミーツ

ココナラ

ココナラのメニュー
https://coconala.com/

ユーザーは、まず出品者に関しては本業として利用する人にとっては本人に代わって集客面でのメリットがあり収入が増加する。また、副業として利用する人には、副収入が得られ、人の役に立つという喜びが得られるといったメリットの側面がある。

購入者に関してはより納得度高く(既存業者に依頼するよりも自身の期待や予算に合ったサービスを選ぶことができる)、多様な出品サービスや幅広いカテゴリから選べ、いつでも必要な時に必要な分だけ購入できる、細かなスポットニーズに合致しているものが見つけやすいといったメリットがある。

更に約40万件(2020年11月末)に及ぶ各種出品サービスから、自らが必要とするサービスを選択・購入することが可能。また、希望する出品サービスが無い場合には、「見積り・カスタマイズ相談」や「仕事・相談の公開依頼」を通じて出品者からの提案を募集することも可能である。

同社はユーザー間の取引金額の一定率(25%を基本とし、取引金額が5万円超となる場合は段階的に低減)をテイクレート(手数料)として得ている。

ココナラのカテゴリ
https://coconala.com/

カテゴリの中ではこれまで「占い」関連サービスに関する取引が活発に行われてきた結果、相談系カテゴリの取引割合が多数を占めている。

近年は、「制作・ビジネス系カテゴリ」の取引拡大や「法人アカウント」機能の導入によってその割合は減りつつあるが、ココナラにおいて「占い」カテゴリのサービス全体に占める割合は高い状況にある。

直近3年の流通高全体に占める割合は、41.6%→32.2%→28.8%(同営業収益に占める割合は51.2%→40.7%→36.6%)という推移で、今でも収益の約3割強を「占い」カテゴリが占めている。

そのため、同社は事業上のリスク回避のため、法人アカウント機能以外にも、PRO認定制度、ビデオチャット機能、見積り・カスタマイズ相談機能などの導入を進めている。

ココナラ法律相談

https://legal.coconala.com/

ココナラ法律相談は、同社登録弁護士とユーザーのマッチングサービス。ユーザーは自身にあった弁護士を見つけ、身近な悩みやトラブル等に関する相談や必要に応じて弁護士へ依頼をすることも可能。収益モデルとしては、無料プランと有料プランがある中で、有料プランでの所定の料金体系に基づいた固定の利用料金を得ている。

具体的には、掲載可能な注力分野の個数、インタビュー取材記事の作成サービスや掲載写真の撮影サービスの有無、料金表などの詳細情報の掲載可否や、PR枠表示の有無といった内容によって、有料会員の月額料金を決定。

「ココナラ法律相談」へのユーザーからの弁護士への問い合わせ数は順調に伸びており、これを背景として弁護士からの広告料収入である固定の利用料金も増加している。

同様のサービスを展開している企業に、今急成長している弁護士ドットコムがある。同社の場合、ユーザー側もサイト利用でも一定以上の機能利用には有料登録が必要となるが、同社は見たところユーザーは全て無料でサイト利用ができそうだ。

特徴と優位性

同社の他社との違いや特徴は以下3つが挙げられているのでそれぞれみていきたい。

・総合カテゴリ型の幅広さと事業継続の長さ
・強力な顧客エンゲージメント
・ビジネスモデルの拡張

総合カテゴリ型の幅広さと事業継続の長さ

先ほどお伝えしたように、ある領域に特化したBtoCサービスやCtoCサービスも存在しているが、同社の場合は特定の領域に絞らず、多種多様なカテゴリでサービスが出品、取引される。

そのため購入者にとっても、広範な世代のニーズにマッチしたサービスが出品されており、結果として、ココナラは性別を問わず、幅広い年齢の多様な属性のユーザーに利用されている。

また、依頼がない状態でも、出品者が先に自らの知識・スキル・経験を出品することができるため、どのような人でも出品が可能で出品のハードルが低くい。

そのため、多種多様な人が知識・スキル・経験を出品することができ、総合カテゴリ型のサービス版ECサイトとして出品サービス数、評価数では競合するサイトを上回る規模になっている。

強力な顧客エンゲージメント

同社は単一のカテゴリからの継続購入だけではなく、一度サービスを利用したユーザーが複数カテゴリから購入する傾向にある。同社の見解として、これはユーザーが一度サービスを利用した際に課題が解決されたりニーズが満たされたりした場合に、以降何かしらの課題やニーズが発生した際にココナラを連想し、再度利用に訪れるためとしている。

そのため、同サービスは既存の顧客層からの継続的な収益が見込めることになり、結果としてリカーリング型の収益モデルと同等の安定した収益構造を有している。

ビジネスモデルの拡張

冒頭お伝えしたように、創業当初のココナラは、取引単価をワンコイン(500円)のみ、対面でのサービス提供を禁止しオンライン限定としてスタートした。それは南氏の「インターネットサービスだからこそ、順番を間違えると広がらない」という考えがあり、カテゴリやサービス提供のタイミングの見極めを慎重に行ってきた。

そのような戦略が結果となり、知名度、顧客基盤が整ってきた今現在、ビデオチャットツールや対面でのサービス提供を可能とし、今後も機能の追加とともにサービスの拡張を行っていく予定である。

今後の成長戦略

同社サービスはこれまで個人の購入者が中心だったが、今後はビジネス目的でもココナラを利用しやすくなるような施策を継続して導入することで、ビジネス利用の需要獲得を広げていく方針だ。

法人利用の場合は、個人で利用する場合と比較し、サービス単価が高額となる傾向があるため、ビジネス目的での利用を取り込むことで、ARPPUの上昇を想定している。具体的には以下3つの施策を計画している。

①高いレベルのスキルを有する出品者が出品しやすいように、段階的に出品可能な価格帯の変更

②「PRO認定制度」により、知識・スキル・経験のレベルが高い、いわゆるプロの出品者の検索を可能にし、ビジネス目的でも対応可能なサービスの増加。さらに、購入者である法人の利便性向上のため、請求書払い等が利用可能な法人アカウント機能の開始

③法人顧客が購入しやすいマッチング方法を確保する施策として、「見積り・カスタマイズ相談」機能の開始。これにより特定のサービス紹介ページを閲覧した購入者が出品者に対して提供サービスを個別カスタマイズした提案依頼を非公開で行うことを可能にする

総括

副業の流れやコロナ禍であることをきっかけに、同社のような個人個人のスキルやスキマ時間を活用できるサービスの勢いが増している。特定の領域に絞ったサービスやビザスクのようにより専門的なレベル感の課題解決を目的としたサービスなどもあり、これらのサービスを拡張させようとした時には、最終的にどこかでぶつかる局面が出てくると思う。

そこではユーザーにとっての認識の違いや初回利用時の体験満足度の違いによって、伸びるサービスとそうでないサービスの差が拡がってくるのではないだろうか。いずれにしても同領域は今後も拡大が見込まれるため、引き続き注目していきたい。

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